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最近読んだ本(2004年) 

題名 著者 コメント  NO
優しい経済学
〜ゼロ成長を豊かに生きる
高橋伸彰氏 ”いまの日本に不足しているのは成長力ではありません”と筆者は力説する。『改革なくして成長なし』というスローガンの現政権の前提となっている目標を疑問視している。ここは、頷ける部分も多い。なぜ、成長なのか?、無限成長などあり得ないと皆、わかっているからだ。閉塞感の打破という目標に対する筆者の解決策は、”分配によって安心と安定を提供する協力社会”である。分配政策は共産主義的な臭いがして、あまり気持ちはよくないが、その具体策を次回作に期待したいところだ。
50
あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾氏 小学校時代から大学を卒業して就職するまでの自伝風エッセイ集である。学校給食の不味さとか、ウルトラセブンの思い出とか、自分の記憶と若干オーバラップするところもあるが、年齢を見ると5歳くらい年上であり、その差は大きい感じがする。東野氏は”怪獣おたく”であるらしいが、自分には”怪獣”の記憶はほとんどない。エッセイには、屋外で遊んだ思い出話はほとんどないが、自分には室内で遊んだ(例えば、TVとか映画とか本とか)記憶はあまりない。
49


プロフェッショナルマネジャー ハロルド・ジェニーン氏 昔、ITTというコングロマリットがあったらしい。59年に著者が最高経営責任者に就任して以来、14年にわたって増益という金字塔を打ち立てたそうだ。その彼が記した経営に関する随想である。例えば、セオリーで会社経営はできないと言う。ただし、セオリーを知ることは無駄ではなく、著者自身も機会に恵まれていればMBAを取得したいと思ったという。全般的には、一昔前の、成長の時代の経営哲学という感じがする。社会とか、世界とか、地球とか、そういう視点はあまり見られない。
48


亡国のイージス(上・下) 福井晴敏氏 大作である。イージス艦によるドンパチ物語かなぁと思いは杞憂に終わった。生い立ちの全く異なる三人の自衛官を主人公にし、三人がそれぞれの生き様を振り返る。ある者は過去と決別し、ある者は忘れていたことを思い出し、またある者は将来の夢を見つける。イージス艦という船の上で、アメリカ、北朝鮮を絡めて、首相を含めた永田町を巻き込んで、”事件”は展開していく。映画化されるようである−どこまで映像化できるか興味がある。
46
47
おれは非常勤 東野圭吾氏 短編集である。非常勤講師である”おれ(名前はない)”が派遣先の学校で遭遇する事件を解決するという設定
だ。初出雑誌が「小学六年生」ということなので−大幅な加筆修正をしたらしいが、やはり軽さが目に付く。巧妙な
トリックだけではなく、深層心理を描くところを期待している読者には少々物足りないかもしれない。ネタばれにな
ってしまうが、”ムトタト”=”以外”というような細かい騙しが続く。
45
未来への処方箋 船井幸雄氏 著者は船井総合研究所という上場企業のオーナで、その著作数は二百数十冊にのぼる有名人である。が、これ
まで読んだことはなかった。「原因の世界」「結果の世界」「イヤシロチ」「本物時代」等独特の世界感が展開され
る−カリスマ経営者はやはり”宗教家”である。実務者としての彼は1万件以上のコンサルティングにおいて失敗
は一度もないという。どうしたらそのような神業ができるのか−ダメだと思った仕事は引き受けないことが秘訣のよ
うだ。
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子どもを叱らずにす
む方法おしえます
スティーブ・ビダル
フ氏
著者はオーストラリアのファミリー・セラピストらしい。オーストラリアでも昔は体罰が当たり前の時代があった。し
かし、今は違うと言う。”立って考える”ことを薦めている。感情的に叱り飛ばすのではなく、もちろん、体罰などで
はなく、部屋の隅に連れて行き、子供自身に”立って考えさせ”、”解決策を一緒に考える”ことを提案している。子
供を一個の人格として扱うべきだということなのだろう。
43

生きがいの創造  飯田史彦氏 著者は「人事管理論」を教える大学の経営学部の助教授である。人事管理上、仕事人としての生きがいをどう見
つけ、あるいは設定したら良いかというようなハウツーものを想像していたが、全く違った。様々な大学を中心にし
た”生まれ変わり”に関する研究報告をベースにした、そこから派生させた”生きがい”の創造がテーマである。宗
教ではない、と著者は力説するが、ある種の宗教という感じがする。宗教だから、悪いということはない。
42


内側から見た富士

「成果主義」の崩壊
城 繁幸氏 著者は、1973年生まれの東大法科卒。いわゆる暴露本と違って、「富士通」への愛着を感じるところが好ましい。
「富士通」の再起を願っているところが感じられるところが読み手の不快感を軽減する。大企業なら、どこでも似た
ようなことは起きているはずだ。「成果主義」だけが富士通凋落の原因だとは思えないが、そのひとつの原因とし
ては存在するのだろう。これを富士通をはじめとする多くの企業経営者がどのように読んだかに興味がある。
41

血と骨(上・下)  梁石日氏
(ヤン・ソギル)
凄まじい我侭ぶりである。その名を金俊平と言う。巨漢で凶暴で手が付けられない。蒲鉾職人であった彼は、戦
後のどさくさの中でお金をたんまり儲けたものの、吝嗇家として描かれている。息子にも、正妻にも愛想を尽かさ
れ、一人ぼっちだ。彼は幸せだったのだろうか? とふと思う。晩年の情け無い姿も悲しい。ビートたけしが演じる
映画が公開される。
39



40


青の炎 貴志祐介氏 「倒叙推理小説」というジャンルに分類されるようだ。刑事コロンボのような話の展開で、犯人を中心に描き、犯罪
の手口や背景などを早々にばらしてしまう。この本では、高校生が完全犯罪を目指して、人を殺す。そして、また
一人殺す。やはり、計画は”完全”ではなく、綻び始める。コロンボの代わりに、ネチネチ追い詰める警官が登場す
る。時々、話が脱線するため、ぶ厚い本になってしまっているのが残念だ。
38


症例A 多島斗志之氏 神経症と精神分裂病(最近は、総合失調症と呼ぶ)のクロスしたような病気を”境界例”と呼ぶらしい。神経症はノ
イローゼとほぼ同義であり、比較的簡単に直るらしいが、分裂病という脳の病気になるとそうはいかない。この本
では綿密な調査を行った上で、精神分裂病の患者と精神科医を中心に、謎解きを絡めてストーリーが展開する。
境界例か、解離性同一性障害(多重人格)か、その判断が難しい様子が丹念に描かれている。
37


僕の生きる道 橋部敦子氏 全く知らなかったが、テレビドラマの原作らしい。「生きる」をテーマにした「余命1年の高校教師」という持ち込まれ
た企画がその原点らしい。”(大衆)受け”狙いという側面がかなり大きい−主人公に感情移入できない場合、そ
のストーリー展開に辟易するだろう。主人公の中村先生は、死に直面し、自らの生を正していく。それを見たみど
り先生は、ある意味で感動し、愛情をもって支えていく。
36
求む、仕事人! さ
よなら、組織人!
太田 肇氏 ”組織人”とは会社と個人がベッタリの関係であるとし、その一方、”仕事人”は会社と個人は”仕事”を介在して
関係する。このとき、個人と会社はベッタリではないため、転社(”転職”ではない)は自由自在である。”強い”個
人はこれでいい。ただし、”弱い”個人にはかなりキツいのではないだろうか−いろいろな関わり方があっていい。
35


神の手 望月諒子氏 書くことに取り付かれた小説家の卵が登場する−”小説家っていうのは心の中に怪物を一匹飼っている。その怪
物を育てることにより作家になり得る”と言う。小説の世界と現実との区別がなくなり、空想のみの世界で生きると
いう状況は想像するに難くない。そんな小説家の卵が事件を起こす。それを、隠蔽する人。隠蔽されている事実を
暴こうとする人。。。複雑な人間模様が展開される。
34

光と影の誘惑 貫井徳郎氏 @「長く孤独な誘拐」、A「二十四羽の目撃者」、B「光と影の誘惑」、C「我が母の教えたまえし歌」の4編から成
る。Aのトリックは面白い。屋外での密室殺人という風変わりな設定だ。ただ、屋外でないとこのトリックは使えな
い。Cの”騙し”も素敵だ。途中で読者に敢えて気づかせるところが心憎い。67年生まれの貫井氏の才能には舌
を巻く。よくもいろいろと思いつくものだ。
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人間の条件(上・下)
 
森村誠一氏 新興宗教「人間の家」の犯罪と戦う刑事を描く。ネタは、「統一協会」で騒ぎになった集団結婚式及び拉致、オウ
ム真理教の一連の事件だ。ノンフィクションという舞台設定の上で、フィクションを構築している。宗教法人は警察
にとってはハードルの高い対象であることを再認識した。”私が良ければいい”と言う信者と、”あなたを心配する
私のことも考えて”という家族・・・・・”洗脳”と”信心”の境目を判断することは極めて難しいのだろうと思う。
31
32

死の壁 養老孟司氏 『バカの壁』が大ヒットしたので、二匹目のドジョウ狙いかと勘ぐりながらも、あまりの読みやすさに一気に読んでし
まった。結論的には、死は避けられないので悩んでもしょうがない。特に、”一人称の”死は本人は意識できない
のでなおさらだ。それよりも”二人称の”死や”三人称の”死に向き合った方がよい、というようなことである。一元
論を徹底的に批判していながら、一元論的な物言いが良い。参勤交代制を法律で定めよ、なんて提案は笑ってし
まう。
30
ブランディング・カン
パニー
〜成功する9つの法則
竹生孝夫氏 九つの法則を列記すると、@哲学・ビジョンがあること、A違いを創ること、B創造性と革新を絶えず追求するこ
と、C長期的視点をもつこと、D稀少性を生かすこと、E感動体験を演出すること、F価値観を共有化すること、G
時間軸と戦略の一貫性を保つこと、Hトップがブランドの全責任をもつこと、である。企業は”らしさ”を持たなけれ
ばダメだ、と言い、その”らしさ”を持つためのノウハウを提供している。”言うは易し”と感じるところも多い。
29

裏と表 梁石日氏
(ヤン・ソギル)
知らない世界のことを垣間見るのは楽しい。これは、金券シュップの経営者が主人公であり、金券ショップの内情
を教えてくれる。”拾い屋”と呼ばれるホームレスの人がいると言う。500円のテレホンカード1枚とかを換金するら
しい。お釣りの出る商品券を利用して、小銭を稼ぐ人もいると言う。また、選挙があるときには、大量の金券が流
通すると言う。いずれも、興味深い。
28
弁護士はぶらりと推
理する
マルチェロ・フォイ
ス氏
”散歩しながら、ちょっと考えよう”という帯広告に惹かれて読んではみたものの、”ちょっと”考えただけではストー
リーが追いかけられない。ひとつの原因は、リカッド・ファンティーニだの、ルッジェーロ・タンキスだの、ナタリーノ・
オッルーだの、コズマ・カスーラ・ペスだの、人の名前が覚えきれないところにある。訳者には申し訳ないが、”あ
ん子はうっまれながらにおどこめぇだけんど、・・”といったイタリア方言の訳も残念ながらピンと来ない。
27

上司は思いつきでも
のを言う
橋本治氏 タイトルがいい。思いつきでものを言う上司を持って困っている人も、思いつきでものを言っているかもしれないと思
っている上司にも気になるネーミングだ。”思いつきでものを言う”のは、企業が大きくなって、管理のための管理
が必要となり、”現場”を知らない管理者が増えていることがひとつの原因と説く。部下として、上司の”思いつき”
に対応するためには、議論をすれば不毛と化すので、”思いっきり呆れる”ことだとする。ただ、これでは何も解決
しないような気がするのは気のせいか・・・
26


小説 ザ・外資 高杉良氏 破綻寸前の政府系邦銀から外資の金融機関に移った主人公は、海外で再びヘッドハンティングに遭う。外資の
日本法人のセクション立上げに携わることになる。しかし、外資の金儲け至上主義に苛まれ、再び、転職する。”
虚業”から”実業(メーカ)”への転職だ。モノ作りへの原点回帰を促す作者のメッセージなのかもしれない。ハゲタ
カファンドに代表される巨大化・肥大化してしまった外資系投資金融機関は、企業経営者にとって、時として凄ま
じい脅威である。
25

神のふたつの貌 貫井徳郎氏 貫井氏の作品はじっくと読まないと騙されてしまう。騙されることを楽しみに読んでいるところもあるが、まんまと騙
され、もう一度最初から読んでみよう、という気になる。”なぜ、神様は不幸な人を不幸なままほっておくのか?”と
いう疑問を牧師である主人公が投げかけることから始まる・・・・重いテーマだ。難しいことはわからないが、結局
は”信じるものは救われる”ということなのだろうと思う。
24


迷宮遡行 貫井徳郎氏 ”嫁さんが失踪しちゃったんですよ”と言いながら、色々と調べまわる元サラリーマン。嫁さんの失踪の原因を求め
て、ヤクザ(「渡辺組」と「神和会」という二つ)に、台湾マフィアに、覚せい剤に、拳銃までもが登場する。日常が非
日常に流れていくさまは、桐野夏生氏の『OUT!』(2002年NO.39、40)と似ているところがある。最後に辿り着い
たところで、主人公が見たものは、知ったことは・・・・。”知らぬが仏”ということもある。
23
会津藩vs長州藩 星亮一氏 長州側はそうでもないが、会津側の長州嫌いは凄まじい。朝鮮半島における秀吉嫌いと同じかもしれない。歴史
的事実を踏まえて、その原因を探ると、実は誤解の部分もあると言う。薩長正規軍が会津を徹底的に叩いたと
き、長州の主力部隊は参加していなかったらしい。長州にとっては濡れ衣だったのかもしれない。いずれにして
も、負けた側の執念、怨念は恐ろしい。
22
赤目四十八瀧心中
未遂
車谷長吉氏 凝った文体で、凝った用語を使う、昔の小説のような感じがする。現代の軽い口語に慣れてしまっていると非常に
読みづらい。暗〜い雰囲気は十分過ぎるほど伝わってくるが、とにかく読みづらい。”併し(=しかし)”という接続
詞が意図的に(?)多く使われていることも、読みづらさを助長しているような気がする。世捨て人のお話だ。
21

合併人事 三神万里子氏
細田浩之氏
小説ではない。教科書でもない。昨今、大流行の金融業界の合併に伴う人事問題のレポートと若干の処方箋だ。
企業の貸借対照表に、人材(価値)を含める動きがあるという。その評価(精査)をデューデリ(ジェンス)という。そ
こでは、これまでの業績ではなく、合併後の新しい文化の中でどれだけ貢献できるかがポイントであるという。よっ
て、これまで日本企業が行っていた人事考課とは視点が異なることになる。
20

人生後半戦のポート
フォリオ
−「時間貧乏」からの脱
水木楊氏 カネ・モノ・時間という評価軸で、自分の人生のポートフォリオを描いてみましょう。仕事人間は、カネはあるかもし
れないが、(自分の)時間はないかもしれない。田舎暮らしの人はカネはないかもしれないが、時間はたくさんある
かもしれない。拘束時間(=仕事時間)が長い人は、拘束時間の中に自分時間を作りましょう、と言う。すでに多く
の仕事人間はそうしているはずだ。
19


慟哭 貫井徳郎氏 これは面白い。全く関係なさそうな話が同時並行で進んでいく。絶対にこの二つの話には関係がある、と睨んで
読み続けると、なんとなくわかってくる。ただし、こういうことか、と思ったのも束の間、作者はその裏の展開を用意
してくれている。子をなくした親の哀しみを幹にして、腐った警察官僚組織、いかがわしい新興宗教を枝葉にしな
がら、話は進んでいく。
18
人間を幸福にする
経済−豊かさの革命 
奥田碩氏 トヨタの会長である奥田氏が経団連の会長として、日本の将来ビジョンについて語った書。第四章では「新しい成
長のための戦略」として、環境ビジネス、観光ビジネス等で雇用を掘り起こそうと提言している。改革なくして成長
なし、という政府のスローガンと似ている。・・・でもね。永遠に成長しつづけることなどできないことは皆わかってい
るのだ。
17


凛冽の宙 幸田真音氏 「凛冽(りんれつ)」を辞書で調べると、”寒さの厳しい”こととある。「宙(そら)」は”この世界をあまねくおおう屋根”
とある。法を犯してまでも利益優先で企業を経営する金融業界に身をおく主人公が、厳寒の地で最後に決断した
こととは? 大衆向きのストーリーの中で、金融業界の裏事情を巧みに取り入れ、企業倫理という重いテーマを扱
う。読みやすさで二重丸の作品である。
16

組織戦略の考え方
−企業経営の健全性の
ために
沼上幹氏 組織が腐敗すると顕著に現れる傾向があると言う。複雑怪奇なルールが出現しているらしい。その腐敗の原因の
ひとつとして、”成熟事業部の暇”があり、そこでは”秀才閑居して無用の仕事を増やす”と言う。なかなか、面白
い。また、マズローの欲求階層説の最上位である”自己実現”のみに光を当てるのは資本家の罠だと言う。その
一つ下の承認・尊敬こそがまずは大切だと説く。これまた面白い指摘である。
15
プリズム  貫井徳郎氏 風変わりな小説である。帯広告には”推理ゲーム”とある。いわゆる推理小説のような種あかしがないのだ。いろ
いろな立場の人がそれぞれに推理はするけれども、結論はない。真実は見えないままだ。”なるほど!”という読
後感を求めている場合には、肩透かしを食らうことになる。モヤモヤしたまま終わってしまう。
14
修羅の器 澤田ふじ子氏 昔、水野監物という武将がいた。”常滑(とこなめ)”という焼き物の産地の武将だ。信長の禁窯令(”瀬戸”以外で
は焼き物は作るな、というお触れ)のおかげで波乱の人生となる。本能寺の変ののち、これまでの恨み、憎しみ
から判断を誤って、明智側に味方してしまう・・・・・面白い内容なのだが、なんだか読みづらかった。話手がコロコ
ロ変わるからかもしれない。
13
幼稚園では遅すぎる
 
井深大氏 ”三つ子の魂、百まで”は本当だ、3歳までの幼児教育でその子の人生が決まるという脅しのような内容だ。それ
ほど著者は拘りがある。井深氏は言わずと知れたソニーの元社長さんである。この社長さん、幼児教育に目覚め
ちゃったらしい−。狼に育てられた”人間”は社会復帰できなかった(でしょ)−だからと言って、盲目的に全面的に
信じ、かつ実行する気にはなれない。
12

悪魔のパス、天使の
ゴール
村上龍氏 作家の村上龍氏と、サッカー選手の中田英寿氏は友達である。ヨーロッパで活躍する一人の日本人サッカー選手
を中心に、サッカーの試合を文章で綴る。サッカー解説書のような側面を持つ、ちょっと風変わりは小説である。サ
ッカーなので、11人×2チーム=22人の外国人の長〜い名前が登場する−なかなか覚えられないのが玉に瑕
だ。
11

最終名義人 清水一行氏 土地売却に伴う悪徳不動産業者の物語である。主人公はひょんなことから、第三者の土地売却の仲介を依頼さ
れる。素人がしゃしゃり出て火傷をしてしまう−金額の大きな契約では弁護士を同席させるのが定石であり、相手
側の弁護士を名乗る人が本当に弁護士資格を持っているかどうかを確認することも必要になるようだ。恐ろしい世
界と言うほかない。
10
そのバカがとまらな
ビートたけし氏 好き勝手、思いつき(?)のエッセイであるが、妙に説得力があるところもある。少年犯罪の問題について、戸塚ヨ
ットスクールに入れてしまえ、と言う。確かに、いきなり海に放り込まれたら、ヤワな少年達にはひとたまりもない
であろう。いろんなことをいろんな風に考えている人である。
9

会社人間が会社を
つぶす
パク・ジョヤン・ス
ックチャ氏
これは表題に騙された(^ ^;  ワークライフバランスについてのレポートが中心である。アメリカの企業での報酬と
は”お金”重視で、福利厚生には力を入れていないと思っていたが、最近はそうではないらしい。中には養子縁組
を会社が支援しているところもあると言う。”お金”では買えないサポートを会社がして、雇用の確保を図っていると
いうことのようだ。
8
少年計数機〜
池袋ウエストゲートパーク
U
石田衣良氏 計数機とはカウンターのことである。よく交通量調査等でアルバイトの人がカチャカチャやっているヤツだ。その少
年はなんでもかんでも数えないと気が済まないらしい。そんな人も都会にはいるってことだ。いろんな人がいろん
なことを考えながら暮らしているのが都会だってことなんだろう。考えるだけではなく、いろんなことをしちゃう人が
いるのだ。
7

孫子・勝つために何
をすべきか
谷沢永一氏、渡部
昇一氏
孫子の兵法は我々日本人の生活の中でしばしば出現する。例えば、”呉越同舟”などもそうらしい。孫武の書に
何が書いてあるかを伝え、谷沢氏と渡部氏がそれに対するコメントを記している。”半ば済(ワタ)らしめて之を撃た
ば利なり”−”宋襄の仁”にはなるな、という説は、下記の「武士道」とは視点が違って面白い。孫子は勝つための
書であり、生き様を問うものではないらしい。
6

武士道 新渡戸稲造氏 難しい本である。著者38歳(1899年)のときの執筆で、しかも原本は英語だそうだ。驚きである。武士道をいくつ
かのキーワードで解説する。「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」「克己」・・・いずれも現代においては忘れら
ているものが多い。著者曰く、”その(武士道の)将来を示す不吉の兆候が空にある”。−哀しいかな、その予言
は当たってしまっているのかもしれない。
5
田舎暮らしをしてみ
れば
林えり子氏 田舎に居を移した生粋の江戸っ子がそこで体験したこと、思ったことを綴ったものだ。田舎暮らしとは言うものの、
ここでは対人間(田舎もん)という話がほとんどであり、対自然あるいは対自分という視点はあまりない。筆者の日
記を少し、”面白ろおかしく”アレンジしたというレベルのものである。その”面白ろおかしく”という点も他人への攻
撃が中心であり、残念ながら面白さが伝わってこない。 
4

吉田松陰(上・下) 童門冬二氏 ”身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置し大和魂”という歌を残して、三十歳でこの世を去った吉田松陰。25歳
で江戸伝馬町の牢屋に入ってから、わずか5年余りの間に、教育者として凄まじい足跡を残していった。その松
陰の人間像にスポットを当てて、小説風に描いている。人をやる気にさせちゃえば、相当なことはできてしまうの
だ。”一粒の麦もし死なずば、ただ一つにてあらん。もし死なば、多くの実を結ぶべし” 
2
3

失敗の本質
〜日本軍の組織論的研究
野中郁次郎氏他 ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦という6つの戦いの
顛末から、その敗北の原因を日本軍の組織に焦点を当てて考察する。その要因は、@人的ネットワーク偏重、A
属人的な組織統合、B学習軽視、Cプロセスや動機の重視、といった点に見出せるという。環境に適応し過ぎる
と、次の環境変化に耐えらなくなる−日本軍はこの形に嵌ってしまい、戦略のオプションを狭めてしまったという。
多くの成功体験を有する現代の組織にも似たような症状が見られる。
1