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最近読んだ本(2003年)


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★★ 波のうえの魔術師 石田衣良氏 ここで言う”波”とは相場のことである。特に株式相場を指す。経済小説のようであり、また、主人公が若いということもあり、青春(成長)小説のようでもある。”ジジイ”に手ほどきを受けながら、株式相場の中で、お金を成長させていく。お金が目当てというよりも、自分の第六感に磨きをかけることに喜びを見出していく。その一方、”ジジイ”はつまらない復讐に燃える。というな面白い構成の小説である。
60
幻想運河 有栖川有栖
大阪とアムステルダムが舞台になっている。いずれも水の都らしい。その運河にバ
ラバラ死体があがる。なぜ、バラバラなのか、普通は隠すためであるが、わざわざ
目立つように運河に流したのはなぜなのか? −というような謎解きよりも、アムス
で暮らす日本人の生活ぶりの方が趣深い。念入りな取材に基づくと思われる小説
である。
59

架空通貨 池井戸潤氏 元銀行員の著者ならではの作品だ。架空通貨が流通する街が登場する。架空通
貨は弱い立場の会社もしくは人のところに流れ込み、そこで蓄積される。儲かるの
は架空通貨の胴元だけであるのは自明だ。ただし、架空通貨を安値で買い漁り、
利ざやを得ようとするヤクザもいたりする−お金がすべてになりつつある社会に対
する警鐘か?!
58

クリティカル・チェーン
〜なぜ、プロジェクトは予定通り進ま
ないのか 
エリヤフ・ゴー
ルドラット氏
ゴールドラット博士4冊目である。二匹のどじょうならぬ、四匹目かと思わないでも
なかったが、買ってしまった。TOCという理論の提唱者である彼は、それを色々な
局面で応用できることを小説形式の著書で示し続けている。今回のクリティカル・チ
ェーンはクリティカル・パスとは違う。それは、プロジェクトにおけるリソース競合を扱
うものだ。そんなにうまくいくんかい、と思わないでもないが、考え方としては面白
い。
57

光源
桐野夏生氏
帯広告には、”逆プロジェクトX”と紹介されていた。崩壊の物語である。登場人物
は、映画プロデューサ、監督、撮影監督、主演男優、主演女優。それぞれの思惑
がある中で、ぶつかり、対立し、綻び始める。そして、どか〜んと崩壊する。この人
間模様は趣深いところがある。それぞれに似た人が近くにいるものだ。。。
56
預金封鎖
副島隆彦氏
2005年にはアメリカ発の世界大恐慌が発生するという。だから、タンス預金も銀行
預金もみんな紙切れ同然になる可能性があるという。だから、お金は使おう/貯め
こんでいてもしょうがないという展開だ。どこに使うかというと、金と投資。投資は利
回りや、売買差益狙いではなく、ベンチャー企業の育成目的だという。若者に投資
しよう、という主張は興味深い。
55
プロジェクトはなぜ失敗す
るのか
伊藤健太郎
プロジェクトはよく”失敗”する。その真因はどこにあるのか? という展開を期待し
ていたが、一部の事例解説を除いては一般論に終始している。一般的なプロジェク
ト・マネジメント手法の簡単な解説は、プロジェクト・マネジメントのバイブルと言わ
れるPMBOKのサマリといった程度のではある。そう簡単には語りつくせないテー
マということなのだろう。
54


田舎暮らし虎の巻
佐藤彰啓氏
都会から田舎へ移り住む人が増えているという。多いのは50代、60代らしい。都会
の喧騒の中で、目いっぱい働いて、第二の人生を田舎で過ごす人達だ。田舎には
田舎の”しきたり”があり、苦労も多い。様々なエピソードを絡めて、その成功要因
を綴っている。事例が多い点で、単なるノウハウ本を超える面白さがある。
53

ネジ式ザゼツキー
島田荘司氏
トリックありきのミステリーだ。「占星術殺人事件」を彷彿させる普通ではない死体
が発見されたところから、話は始まる。頭部と胴体部が切断され、そこが”ネジ”に
よって接続されていた−いったい、誰が何の目的でそのようなことをしたのか。意
外な結末が待っている。”ミス”が原因のトリックだ。
52

企業年金の真実
〜超高齢社会の「勝者」と「敗
者」
「年金情報」
編集部
”企業年金の意義はもちろん、見えないところで企業が従業員の老後をサポートし
ていることに初めて気づいた” −公的年金の破綻問題が取りざたされているが、
多くの企業年金も破綻している。代行返上を行い、確定給付から確定拠出型へ変
更しているのは、その流れだ。会社は企業年金について、まずは説明すべきだと
いう主張に賛成だ。
51

エンジェル
石田衣良氏
幽霊が主人公だ。ご丁寧にも幽霊に足がないことの解説まである。その幽霊は自
分が幽霊になってしまった(=死んだ)理由がわからないので、それを調べ始め
る。ユニークな展開である。現実社会のドロドロした実態に対する皮肉なのだろうか
−エンジェルという表題にもそれが表されているような気がする。
50

週末起業
藤井孝一氏
週末起業のコンセプトは、帯広告にあるように「今きみは起業すべきだ−会社を辞
めずにね。」ということだ。この考え方を実践し、結果的には会社を辞めて、自立し
た筆者は自分自身の経験を踏まえて、「週末起業」を薦める。面白い考え方だし、
何よりも”拝金主義”でないところが良い。
49
日本国倒産
青柳孝直氏
このような近未来を予測するような本には”旬”がある。これは2003年初めに書か
れたようだが、ちょっと読むタイミングが遅すぎた。本の冒頭、”2003年9月、小泉
新党ができる”などと書かれているのだ−残念ながら、これだけで興ざめである。
ただし、純農耕民族から調和型狩猟民族へという再生プログラムの考え方は面白
い。
48

すべてがFになる
森博嗣氏
サブタイトルは"THE PERFECT INSIDER"。密室殺人である。密室には、”完全な
る部内者”が存在したということか?−と「存在した」と考える方が正しいと思う。ま
た、理科系出身の著者(現役の大学助教授でもある)ならでは記述が随所に見ら
れ、邦題タイトルもそのひとつだ。”7が孤独で、BとDも孤独だ”と言う−面白い話
だ。Fは16進数なのだ。
47
「原因」と「結果」の法則 ジェームス・アレ
ン氏
ベストセラーだそうだ。1時間もあれば全部読める。すべての”結果”には、その人
の”思い”という原因があると言う。気持ちの持ちようで”幸”にもなり、”不幸”にも
なるという点はその通りだと思うが、この法則に、病気も含まれる−とするところで
無理を感じてしまう。シンプルな法則のみが生き残る。ただし、それが真実か否か
は別の話かもしれない。
46

すべて辛抱(上・下)
半村良氏
半村良氏の作品は久々だ。これが遺作となったらしい。「太陽の世界」に代表され
る壮大なスケールの作品から、江戸人情物語まで幅広い。これは、どちらかという
と江戸人情物語だ。が、大成功の物語ではない。若い時には辛抱して、その後は
金儲けに一生懸命だったが、年老いてからは、目立たないように”生きたい”と切に
願う、そんな主人公だ。年老いた作者の鏡となっていたのかもしれない。
44



45
鳥人計画
東野圭吾氏
理科系出身の著者ならではの作品となっている。スキーのジャンプ競技を題材に、
その飛行の理論的な解説を織り交ぜながら、どうすれば遠くに飛べるか/飛ばせ
るか、に生活のすべてを捧げている人々を描く。他の作品に比べると、やや心理描
写が薄くなっており、”面白かった”という読後感はなかった。 
43
養老孟司の<逆さメガネ
養老孟司氏
養老先生は長く東大で教鞭をとった教育者である。当たり前だと思っていることもよ
く考えると当たり前ではないこともある、と説く。自然を隠蔽するのが都市化の本質
とし、その中での教育は反自然とならざるを得ないと言う。どっちがいいとか悪いと
いう結論はない。どっちもいいところと悪いところがあることを認めようということのよ
うだ。 
42
ウランバーナの森
奥田英朗氏
ジョン・レノンは日本で家族水入らずで過ごしていた時期があるらしい。この4年間
を埋めるべく、作者は創作をした(あとがき)。ウランバーナとは梵語で、盂蘭盆の
意味らしい。軽井沢で避暑をするジョンは、すでに死んでしまった人々と会い、過去
を後悔し、未来の力を得る。そして、再び創作活動を開始する。ちょっと無理があ
る?!
41

アルジャーノンに花束を
ダニエル・キ
イス氏
チャーリィは知恵遅れだ。その日記は、ひら仮名ばかりで句読点はなく、とっても読
みにくい(翻訳はさぞかし大変だったろう)。それが数ヶ月のうちに、学術用語ばり
ばりの日記を書くようになってしまうのだ。この変化は本人の望むことであったが、
その変化を周囲はどう受け止めたのだろうか? チャーリィにとっての幸せとは何だ
ったのか?
40
ベロニカは死ぬことにした
パウロ・コエ
ーリョ氏
死ぬことにしたベロニカは死に損う。しかし、余命1週間と宣告されてしまう。短い
(本当に短い!)、残された命の中で彼女は何を思い、何をするのか。最後には、”
わたしの人生に意味を与えてくれてありがとう”と言う。人生の意味などという重い
テーマであるが、少なくともベロニカの考える”人生の意味”はわかるような気がす
る。
39
会計戦略の発想法
木村剛氏
「会計」が大切だ。その戦略を持つべきだ。と様々な論文を引用しながら、自説を展
開する。ふむふむと納得できるところが多い。ただ、そのあとがきで、”「会計戦略」
を過たなければ、日本は素晴らしい国になり得る”と述べている・・・こんなところで
いきなり”素晴らしい国”と言われても困ってしまう。企業だけが国のすべてではな
いと思うのだ。
38
市場の論理 統治の論理
J.ジェイコブ
ズ氏
扱っているテーマは非常に興味深いが、如何せん難解である。人はその立場によ
って考え方の根本が異なる。それを二つの類型で整理する。ひとつは「市場(=商
売人)」であり、ひとつは「統治(=役人)」である。例えば、前者では”目的のため
に異説を唱えよ”となるが、後者では”目的のためには欺け”となる。登場人物が
皆、高尚すぎて凡人にはついていけない(^ ^;
37

天使の屍
貫井徳郎氏
楽しめる作品である。中学生が次々と飛び降りて死んでいく。その真相を解明しよ
うと最初に死んだ生徒の父親が動く。中学生の論理と、親の論理はまったく別だと
教師に言わせ、それを表現する。67年生まれの作者だからこそ、できるのかもし
れない。なぜ、死んだのか(自殺か他殺か)、その謎解きも面白い。
36

最後のディナー
島田荘司氏
『御手洗』先生はヨーロッパ出張中という設定になっており、石岡先生が一人で奮
闘する。が、しかし、彼一人では謎が解けなくて、ヨーロッパの御手洗にFAXで問
い合わせる。すると、いつものようにスラスラと真相を解明するという寸法だ。作者
の息抜きに書いたのではないかという感じの作品であり、個人的には「御手洗」の
長編モノの方が面白い。
35

窒息するオフィス
仕事に脅迫されるアメリカ人
ジル・A・フレイザ
ー氏
90年代、アメリカは好景気に沸いていた、と思っていたが、その裏で企業は多くの
リストラやM&Aを敢行していたらしい。残った人には長時間労働と手当削減が待
っていた。まさに”24時間戦えますか”という状況だ。その一方で、役員のみが法
外な収入を得るというアンバランス。”仕事に脅迫される日本人”も増えているよう
な気がする。一斉に立ち止まって、今の状況と将来についてよく考えてみた方がい
いのではないか。
34

空山
帚木蓬生氏
産廃施設建設を巡る社会派小説とでも言うのだろうか。いい加減な産廃施設では
有害物質が土中に染み出し、地下水にまで影響を及ぼす可能性がある。だからと
言って、施設そのものの建設に闇雲に反対すると、不法投棄が益々増え、もっと悲
惨な状況を生むことになる。ゴミを出さない社会にしなければ、というメッセージだ。
ストーリー自体は興味深い。
33
安心社会から信頼社会へ 山岸俊男氏 安心社会は村社会であると言う。村社会では村の中にいる間は”安心”していられ
るが、それは外部を排除することによって成り立っている。この形での”安心”はも
はや手に入れることはできない−。様々な心理実験を繰り返しながら、仮説を検証
していく学問の世界の話である。立場が変わればモノの考え方も変わる。例えば、
千円という貨幣価値も置かれている状況によって捉え方は様々だ。心理実験とい
うシロモノはどこまで信頼できるのかしらん。。。
32
不安の力 五木寛之氏 「不安」は人間にとってなくてはならないものだと言い、「不安」と友達になることを
勧める啓蒙書。デジタルディバイドについての「不安」にも触れ、”パソコンがもう少
し人間に使いやすいモノにならなければ使わない”と宣言する。しかし、この展開は
ちょっとおかしい気がする。「不安」が原動力になって”進化”するとすれば、「不安」
から”逃げてはいけない”のではないか。「不安」と友達になるのであれば、”使って
やらない”とはならないはずだ。
31
会社はこれからどうなる
のか
岩井克人氏 東大経済学部の教授である著者がインタビュー原稿から起こした本であり、一般
向けに平易な文章で綴られている。”法人”とはヒト(モノの所有者)なのか、モノ
(モノの所有はできない)なのか? というところから議論はスタートする。これから
の従業員は、会社が提供する/せざるを得ない”Golden Handcuff (黄金の手錠)”
と、突きつけられる”Hold Up”問題の間で葛藤することになるという。とりあえずは、
会社と個人は対等な関係でありたいものだ。 
30

涙(上・下) 乃南アサ氏 帯広告には”涙で文字が読めなくなりました”とあったが、そこまでの感情移入は
できなかった。スピーディーな展開ではなく、じっくりと進む。ただし、全編にわたっ
て、切迫感のような、焦燥感のようなものが付きまとう。最終章の、暴風雨の中で
の”自白”シーンは印象的だ。映画化あるいはTVドラマ化されるとすれば、この最
終章にたっぷりと時間を割くことになるのだろう。
28

29
運を天に任すなんて
人間・中山素平
城山三郎氏 興銀の頭取を務め、その後は経済同友会代表幹事として財界活動に従事した中
山素平氏に関するドキュメンタリである。No24の松本重太郎氏を描いた「気張る
男」もそうであるが、いわゆる小説ではない。”大事は軽く、小事は重く”を口癖にし
ていた中山頭取が去ってから、興銀にいったい何が起こったのだろうか? みずほ
銀行になり下がって(?)しまった興銀を彼はどう見ているのだろうか?
27

銀行 男たちの決断 山田智彦氏 ある大手銀行に三人のライバルがいた。同期入社のエリートだ。一人は、故あって
銀行を去り、あるメーカの役員をやっている。二人はその銀行に残り、それぞれ取
締役である。メーカに行ってしまった彼を銀行業界に復帰させようと、争奪戦が繰り
広げられる・・・彼は戻るのか? そのとき、残りの二人の反応は? −銀座のお
ねえちゃんの話と不倫話は余計な気がする(^ ^;
26



 
「豊かなる衰退」と日本の
戦略
〜新しい経済をどうつくるか
横山禎徳氏 すでに経済成長できなくなった日本に対する処方箋として、「一人二役」、「二次市
場」、「観光産業」という三つを提案する。「一人二役」は面白い。企業の週休三日
制を前提として、二箇所で暮らし、それぞれ別の生活をする。例えば、ひとつでは
猛烈社員、もうひとつでは園芸家(・・・考えると結構楽しい)。こうすると、全体とし
ての個人消費が増えると言う。成長のための、消費増ではなく、「豊かなる衰退」
のための消費増である。
25
気張る男 城山三郎氏 安田善次郎氏(1838-1921)、岩崎弥太郎氏(1834-1885)、渋沢栄一氏(1841-
1931)と同時期に活躍した実業家、松本重太郎氏の半生を描く。”東の渋沢、西の
松本”と言われたほどの大実業家で、鉄道王とまで言われていた。しかし、馬車馬
のように走り続け、気づいたときには不信事業をいくつも抱える結果に。そのとき助
けを求めた安田に対して、”悉皆出します(=私財も含め、すべて提供する)”と言っ
て、本当に裸になった・・・・
24
希望退職を募る 江波戸哲夫
文庫本の帯には、”賃下げ、人減らし。企業人よ、生き残れ!”とある。社員数83
人の中小企業の二代目社長が、10人の希望退職を募るリストラ策を発表する。従
業員の抵抗を受けて、代案として、希望退職6〜7名と賃金カット10%、及び一律
20%の賃金カット(希望退職ゼロ)を提示する。さらに、賃金カットも希望退職もなし
で行ける所まで行って、ダメな場合は会社をたたむ、とする。企業の社会的使命と
は、本当に”生き残る”ことなのだろうか−
23
戦略プロフェッショナル 三枝匡氏 著者は経営コンサルタントである。随分前に著者自身が体験した経営戦略立案及
び実行過程を小説”風”に記述している。医療検査機械の拡販のために、彼が採
用したのは検査薬に機械の代金を上乗せして回収するという方法だった。リースで
もない、レンタルでもない、売切りでもない、新しい手法で大成功したという。こうい
う本を読むと、経営とは、勝ち負けのみを追及するゲームとしか思えない・・・そうい
うもんかもしれない。
22

対決 高杉良氏 昔、労働組合には器量の大きな委員長がいたらしい。著者得意の実在モデル小
説である。彼はスト権を振りかざし、役員の人事権までも掌握し、私腹を肥やす大
物だ。官僚からの天下り社長とその労組委員長の戦いの中で、社長側について奮
闘するミドルを描く。顧客満足とか、利益追求とか、会社のゴールとは無関係に会
社という舞台の上でのドロドロした人間模様が展開される。。。。
21
ジャンプ 佐藤正午氏 ミステリー小説というジャンルに入るらしい。冒頭で失踪してしまった彼女は、最後
の最後で再び登場し、その失踪の理由を明らかにする。ちょっとダメ男の彼は、そ
の失踪の原因がずっと(5年間も!)わからず、ふっきれない。凝ったストーリーで
はないにも拘らず、説明がややくどい(と感じる)。短編小説を無理やり、長編にし
たという印象である。
20

赤ちゃんがピタリ泣きや
む魔法のスイッチ
ハーヴェイ・カ
ープ氏
子宮内の赤ちゃんは、ものすごい騒音(血流、心拍音)の世界に住んでいる。70
〜80デジベルにも及ぶらしい−この小児科医は、”3ヶ月早産説”を唱えている。
あと3ヶ月、子宮の中にいたい/いた方がいいのだけれども、そうすると頭がつか
えて出てくることができないので、しょうがなく(3ヶ月早く)出てくる。だから、子宮
内と同様に、窮屈でうるさいところが心地よいのだそうだ。説得力あり。
19
女子大生会計士の事件
簿
山田真哉氏 現役の会計士補が自身の経験を踏まえて、女子大生会計士という主人公を設定し
て、短編の会計監査事件簿を綴っている。例えば、投資を控えている会社の固定
資産が減っていないことに目を付けた主人公”萌”さんが、そのカラクリを暴く。ま
た、裏金を作っているとしか思えない状況証拠から、その裏金作りの秘密を暴く、と
いうような話だ。会計的な視点は面白いが小説としてはまだまだだ。
18

嘘をもうひとつだけ 東野圭吾氏 相変わらず上手い。短編の中でもちゃんと”どんでん返し”を用意しておいてくれ
る。刑事と容疑者。嘘をつくのは容疑者。その嘘をひとつひとつ暴いていく。そし
て、たどり着いたところが結末か、と思いきや、そうではない。嘘の多重構造。閑話
休題:人はなぜ魚の絵を書くとき、頭を左にするのか?(ほぼ全世界共通らしい)−
答えは本文中。
17
仕事の報酬とは何か 田坂広志氏 仕事には目に見えない三つの報酬があるという。「能力」「仕事(作品)」「成長」−
究極の報酬は最後の「人間的成長」にあるとする。目先の金銭的報酬のみに心を
奪われていては”仕事”は辛いだけだが、見えない報酬に着目することによって喜
びを得ることができる・・・・・という。内容としては悪くはないが、30分で全部読め
てしまう=薄っぺらな=のが難点だ(^ ^;
16


陰の季節 横山秀夫氏 この中の2編「陰の季節」と「地の声」は、テレビの2時間ドラマで見たことがある
(ということに、読んでから気づいた)。その他「黒い線」「鞄」という短編からなる。い
ずれも面白い。警察の管理部門が舞台だが視点は様々だ。退職後の出向者、退
職まじかの警視一歩手前の警部、似顔絵担当婦警、県会対策担当の警察官
僚、・・・新聞記者だったという著者ならではの内容だ。
15

マークスの山(上・下) 高村薫氏 「マークス」って何だ? 地名か? それとも山の名前か? 最後の最後にその由
来が明らかにされる。それは全編を通じての謎説きでもある。連続殺人を扱ってい
るが、殺人描写は一切ない。犯人の論理的な心情描写もない。ひたすら刑事達を
描く。帯には”警察小説”とある。確かにその通りだが、事件の背景を考えるともっ
と大きな小説である。
14

13

動機 横山秀夫氏 横山秀夫氏の著者を初めて読んだ。東野圭吾氏と同じような感じで、面白い。人の
心模様を描いている点がお気に入りだ。収録されている短編のひとつに表題にも
なっている「動機」という作品がある。警察手帳の大量紛失という、普通では思いつ
かないイベントの背景に潜む人間模様を描く。誰が何のために、そんなしょうもない
ことをしたのか・・・興味深い作品だ。
12

憧れのまほうつかい さくらももこ氏 エロール・ル・カインという画家の話だ。聞いたこともなかったが、たしかにスゴイ絵
書きさんだ。ついでに言うと、著者もメチャメチャ絵が上手だ。漫画家だから当たり
前かもしれないが。熱しやすく冷めにくく、マニアックにはならない、こういう性分らし
い。いいものは単純に”好き”、そこに理由などいらないというわけだ。
11

濁流(上・下) 高杉良氏 インターネットで検索したら、『噂の真相 91年8月号』「経済界佐藤正忠の新興宗
教狂い」というタイトルが見つかった。この本のモデルだと思われる。連載5回目で
同氏より抗議を受けて、途中で主人公の名前を変えたらしい。元々は「産業経済界
 加藤忠治」、それ以降は「帝都経済 杉野良治」。この人、昭和3年生まれで今
だご壮健で、ご活躍のようだ。この本を読むと、なぜ?と単純に思ってしまう。 
10
9

コスメティック 林真理子氏 化粧品業界の裏事情が書かれていて面白い。化粧品メーカにとって、もっとも需要
な広告媒体は、雑誌の美容関係の記事らしい。メーカのPR担当は雑誌社の編集
長、美容関係記者に大量の自社製品を送りつけ、パーティを開き、海外に接待し
て、できるだけ多くの誌面を獲得しようとする。この大きさで年棒が決まるところもあ
るという・・・・そんなことは背景のひとコマであって、本題は働く女性と恋愛あるい
は結婚である。
8

天使の耳 東野圭吾氏 原題は『交通警察の夜』。交通事故を専門に扱う刑事達が主人公の連作。表題と
なっている「天使の耳」が一番印象深い。だからこそ、表題にしたのだろう。視覚障
害者は異常に聴覚が研ぎ澄まされる−凡人では到底不可能な音の記憶を持つら
しい。この記憶力が交通事故の原因証明となる・・・が、そこで終わらないのが、東
野作品だ。ちゃんと、どんでん返しが用意してある。
7
溺レる 川上弘美氏 相変わらず、訳のわからない世界が展開されている。「神様」(2002.No35)では
ほんわか、ほのぼの”という読後感があったが、この本は”アイヨクに溺レる”がひと
つのテーマであり、”ほのぼの”しているけど、”ほんわか”とはちょっと違う。登場
人物を”トウタさん”というようなカナタナ表記にすることによって、現実味をあえて落
としている。こうして、おとぎ話のような読後感を誘う。
6

奇跡の人 真保裕一氏 人間ドックの待ち時間で読んだ。病院で、病院が舞台の話を読んだことになる。主
人公は、交通事故が原因で8年間入院した後、社会復帰。過去の記憶を失ってい
るという設定だ。記憶を失うということは、自分が自分であること、を失うということな
のか。主人公は執拗に自分の過去に拘り続ける・・・そこで、彼が知り得たこと
は?? テーマとしては、東野圭吾氏の「変身」(2002.No68)に近い。
5

システム障害はなぜ起き
たか
日経コンピュ
ータ編
日経コンピュータが長い間にわたって、調査し、研究してきたシステム障害の事例
報告である。コンピュータ誌での掲載では、本当に知って欲しい経営者の目に留ま
らないので、単行本として上梓することにしたらしい。そのほとんどは世間を騒がせ
た”みずほ銀行”の障害を扱っている。システム開発現場の実態を知っている(と思
われる)人が書いているので、肯けるところも多い。 
4


 
百夜行 東野圭吾氏 分厚い本(850頁)である。なぜ、2分冊にしなかったのだろう、と内容とは全く関係
のないことを思ってしまう。不思議な読後感である。その理由が解説を読んでわか
った−主人公の内面描写が全くないのだ。内面描写がないと、その人物への感情
移入ができない/できにくい。それでも、主人公は主人公であり、彼と彼女を中心
に物語は進む。ストーリー自体は奇をてらったものではないが、その技巧により、
読み応えのある作品となっている。
3
システム管理者の眠れな
い夜
柳原秀基氏 作者はクボタに勤める現役のシステム管理者である。システム管理者としての東
奔西走の日々を日記のように綴っている。この本を読んで意外だったことは、大企
業であるクボタのITリテラシーはかくも低いのか、ということ。システム管理者が管
理しようとしすぎてはいないだろうか。もうひとつは、クボタがこの本の出版を許した
ということ。会社としては、題材に使われているだけで何のメリットもないような気が
する。
2

城をとる話 司馬遼太郎
昭和40年に裕次郎主演で映画化された”城取り”の原作である。非実利的な野望
を抱く男が主人公であり、”男の仕事は、仕事をするために仕事をするものだ”と言
う。城を取るということだけを目標に、武力・知力・時の運を巧に利用しながら、事を
進める男の姿を描く。進むのもダメ、退くのもダメな状況を死地というらしい。死地か
ら逃れるためには、どちらかに決めて”えいやぁ”と行くしかないと兵法書は教えて
おり、これを実践している。 
1